最近は、楽譜を見ながらレッスンを受けることが一般的ですが、100年以上前は楽譜なしで少しずつ覚えていくことが当たり前の時代でした。
さらに歴史を辿っていくと、江戸時代には、盲人が琴を教えていました。
作曲者に〇〇検校(けんぎょう)という名前が出てきますが、検校というのは、盲人の役職の最高位の名称です。
では、江戸時代に楽譜が全くなかったかというと、そういうわけではありません。
いろいろと工夫された楽譜が存在し、それらは木製の版木によって印刷されました。
それらの楽譜は、教わる側が忘れないようにするためのものであったわけです。
古典曲の弾き方、歌い方の違い
最近は、YouTube等の動画サイトに、様々な方が琴の演奏動画をアップしているので、流派や会派を超えて、気軽に他の人の演奏を聴くことができるようになりました。
特に、六段の調、千鳥の曲、黒髪などの古典曲は、奏者によって、弾き方や歌い方に違いがあります。
弾き方や歌い方に違いがあるのは、これまで述べてきた歴史によるところが大きいわけです。
楽譜なしで頭で覚えていくことのリスクは容易に想像できると思います。
会派が違えば、私が習ったことと、他の人が習ったことが全く違うということがよくあります。
例えば、六段の調の楽譜は、おそらく10種類程、販売されていると思います。
同じ楽譜は無く、後押しや、引き色、かけ爪などの違いがあります。
また、多くの先生が、楽譜通りの弾き方ではなく、自分の師匠から教えてもらったことを加えて教えています。
つまり、楽譜の10種類の弾き方ではなく、会派の数だけ、弾き方が存在することになります。
「私が正しい」「あの人は間違っている」という考えではなく、歴史的な背景を理解し、その違いを楽しんでもらえたらと思っています。
古典曲への向き合い方
先程述べたように、古典曲は会派によって、弾き方や歌い方に違いがあるのですが、だからといって何でもいいというわけではありません。
自分の師匠の弾き方、歌い方をひたすら真似をし、体に叩き込むことが重要だと思います。
古典曲は、メトロノームのような一定のリズムではなく、一拍の長さが長くなったり、短くなったりを繰り返します。
そのような特徴を考えると、そもそも古典曲は、楽譜に表すことができないものだと思っています。
これは、古典曲の難しさであり、面白さ、魅力でもあります。
古典曲独特のリズムが心地よくなるまで、弾き続けてもらえたらと思っています。