琴柱や弦に使われている素材や組み合わせによっても音色は変わりますが、構造上、「胴の持つ音質(響き)」がその楽器の音色に最も大きく影響を及ぼします。
材料
琴の材料には桐が使われます。
その価値は、桐の産地・樹齢によって左右されます。
・産地
琴に使われる桐は、寒い地方で育った重いものが良質とされています。
日照、気温、降雪状況、水質など自然条件の影響が大きく、産地としては、会津地方が一番良く、新潟・秋田がそれに次ぎ、アメリカ・カナダ・韓国・台湾などの外国材も使われています。
・樹齢
樹齢は高いほど良いとされています。寒い地方で、木の直径が琴の幅より太くなるためには、20年以上必要です。さらに、よい琴にするためには、板目で30年以上、柾目では60年以上が必要と言われています。
木目の取り方
甲羅(琴甲材)を造る際の原木の取り口により、すべての琴の甲には異なる年輪=「目(もく)」が現れます。木目の取り方には、板目(いため)と柾目(まさめ)の2種類があります。この目の出方は音質と相関関係があるとされています。
・板目
板目は「年輪が甲表に現れている種類」の木目の名称です。原木から基本通りに切り出した場合には板目になるため、数が多く、良く知られた木目です。
一般には見た目の印象や甲に出ている木目の具合など、好みによって選ばれることも多いようですが、「ギザギザ」と細かく波打った目のものは材料の硬度が高いと見られ、音質面も考慮して板目のものの中では上物とされています。
・玉目
板目の柄の中に丸い斑紋が多数現れているものを玉目(たまめ、たまもく)と言います。
玉目は、特に寒冷な地域で育った原木や、特殊な環境下で育った場合などに現れる木目です。独特の美しい柄とともに音質的にも優れていると言われ、人気がありますが、材料となる木は少なく、きれいに玉目が出ているものは極少数です。
・柾目
柾目は、木の密度が濃いので音質が良く、均一な音色を表現できることが特徴で、演奏家に人気です。しかし、上質な柾目の材料を採るためには、相当に太くまっすぐで、節などが無く、年輪が揃っている原木が必要です。また、一本の丸太からとれる本数も少なくなるため、大変高価です。
造り方
良い原材料には、それに応じて良い加工をします。
琴を造る際には、どの琴も基本的には共通した工法が用いられますが、「甲と裏板のとめ合わせ方」と、「甲の内面の加工」に違いがあります。
甲と裏板のとめ合わせ方
胴の「甲と裏板のとめ合わせ方」には二種類の工法があります。
・刳甲
裏板と甲の接着面にそれぞれ角度をつけて加工し、接着します。表甲、裏板それぞれに45度の切り込みを作り、角のところではめ合わせる方法を取ります。高級品には、刳甲の工法が使われます。
・並甲
甲の底面に裏板をそのまま接合します。磯をみると、違いが分かります。並甲のものでは、磯の下部に約1㎝の裏板を張り合わせた線(裏板の木口)が見えます。刳甲は接合面が隠れています。
甲の内面の加工
甲裏にノミで彫り込みを入れる化粧彫りが施されます。
化粧彫りは、装飾効果以外にも胴の内部での音の反響などを良くする役割を持っています。
・スダレ目
普及品は縦のミゾを彫ります。
・綾杉彫り
高級品には斜線状にノミ目を入れます。
さらにその綾杉目を二重風にした「子持ち綾杉」もあります。
装飾
琴のランクを知る一つの目安として、角(龍角、雲角)、四分六、柏葉の装飾があります。
琴のランクは大きく5種類に分類することが出来ます。
それぞれの特徴は下記の表のようになります。
ベタは枕角だけで飾り無し、角巻は龍角と雲角に飾りが付きます。また、半上角になると四分六に、上角では柏葉にも飾りが付きます。角や柏葉の材料も異なります。例えば、同じ上角にも紅木を使うものと紫檀を使うものがあるのは、甲の材料の程度の良いものは紅木造りにし、そうではないものは紫檀造りにするということです。したがって、同じ上角でも、角に使う材料によって、価格に差があります。
ランク (価格) |
特徴 | |||
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尾部/雲角/柏葉 | 頭部/龍角 | 角・足 材料 |
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ベタ 70,000〜 |
プ ラ ス チ ッ ク |
花 梨 |
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角巻 100,000〜 |
紫 檀 |
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半上角 180,000〜 |
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紅 木 |
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上角 250,000〜 |
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玉縁 500,000〜 |
象 牙 |