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基礎知識

コラム

音感

琴という楽器は、柱を動かすことによって、音を変えることが出来ます。

これが琴が持つ最大の特色です。

可動の柱で調弦するということは、音高の設定が自由なので、転調も可能となります。つまり、13本の弦でありながら、それ以上の音域を確保できることになります。

私はJ-POP等の現代曲を琴譜に直して弾くことがありますが、まず考えるのがどんな音階にするかということです。初心者にも弾きやすい楽譜にするためには、押し手を極力避けるような音階にすることがポイントです。曲に合わせた音階に出来るのは、可動の柱であるからこその利点です。

音感

琴は、押し手や柱の移動によって自分で音を作っていく必要があるため、音程に対しても敏感になります。琴を練習することによって、音をよく聞くようになり、音程感を増すことが出来ます。

音感には2種類あります。

・絶対音感
音を聴いた時に、この音はラだと分かるのが絶対音感です。幼い頃しか身につきません。

・相対音感
音と音を比較して初めて音が分かるのが相対音感です。

では、琴を習得するにあたって、絶対音感と相対音感、どちらが重要なのでしょうか。
私は、どちらも重要で、両方身につけることが望ましいと思います。
ちなみに、私には絶対音感はなく、琴で身につけた相対音感しか持ち合わせていません。

絶対音感の重要性

先日、こんなことがありました。
オンラインレッスンで、生徒さんの演奏を聴いた時に、三の音がズレていると思ったのです。

それで、私が「三の音がズレているので、チューナーで直してください」と言ったのです。でも、チューナーで音を取ったところ、三の音は全くズレてなかったんです。「おかしいなぁ…ズレてるはずなのに。」と思っていたら、なんと、三以外の弦が全て同じくらい上がっていたんです。

つまり、これが相対音感です。比較して聴いているので、三がズレていると勘違いしまったのですが、ズレていたのは、三ではなく、三以外の弦全てだったのです。

この時に「絶対音感があれば、三の音がズレていないことに気付くことが出来たのに…」と思いました。

相対音感の重要性

琴を演奏する前にそれぞれの弦に柱を立てて、13の音の高さが適当な音の間隔になるように調弦しなければ曲は弾けません。
この音の間隔で、よく使われる音の並び方には、それぞれ○調子という名前が付けられています。

1番なじみの深い調子は平調子です。平とは、普通という意味です。
平調子の一はD、ニはGといったように、暗記している人も多いと思います。
でも実は、同じ平調子といっても高い平調子もあれば、低い平調子もあります。
琴の調子は13個の音の並び方の取り決めなのです。一をどのような高さにとるかを決めることによって、一つの調子と音域が確定します。つまり、琴の調子はあくまでも相対音高なのです。

一をDに合わせることを壱越(いちこつ)と言います。基音になりうる音は12種類あるわけですが、実際によく使われるのは6種類(壱越、双調、黄鐘、盤渉、神仙、平調)です。
この6種類の全ての音を覚えるのは大変なことです。13×6の78個もあります。

ここで、相対音感が重要になってきます。

相対音感があれば、音名を覚える必要がないのです。
一をチューナー等で合わせて、一とニを完全5度、一と三を完全4度、三と四を短二度(半音)に合わせればよいわけです。完全5度といった、難しい言葉も覚える必要はありません。
相対音感があれば、耳で聴くだけで、頭で難しいことを考えなくても自然に合わせることが出来るようになります。

まとめ

いかがでしたか?

今回は絶対音感と相対音感について考えてみました。絶対音感は9歳までしか身に付けることが出来ない音感なので、多くの方は身に付けることは出来ませんが、相対音感は琴を弾くことによって身に付けることが出来ます。琴を弾くにあたって、相対音感は非常に大切です。

日頃から良く音を聴きながら練習して身に付けていただきたいです。また、なるべくチューナーに頼らず、自分の耳で合わせることも大切です。

相対音感を身に付けて、音を作ることを楽しめるようになるといいですね。